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Handai-CARP’s blog

大阪大学CARP(原理研究会)です!

ちょ、ちょっとまった!〜ぼく犯罪者じゃないです〜 【法律の仕組み】

ひとこと

甲:「てめェ〜っ‼今日こそゆるさねぇっ‼」
ある日の出来事。

つね日ごろからいけすかない乙に対して心中安らかでなかった甲は、日課である剣術の練習帰り、たまたま路地裏で、あのまさに憎き宿敵―乙の姿を認め、
「積年の恨み晴らすはいまこそぞ!」と正体不明の決意をなし、ここぞとばかりに自慢の木刀をふりかざす―――。
乙:「・・・あっっ‼」
実はというと、身の危険を察知した乙のほうも、護身用にサバイバルナイフを常備。彼はそれををとっさに腹中から取り出し、相手が誰かもわからぬまま、とにかく必死で応戦を試みた。
甲:「なっ、何!?」
ほとばしる汗。 刹那が放つ精彩。 黄昏に浮かぶは、狂おしいほどの余韻…。
甲の野望は花と散る…。

そう次の瞬間、すでに勝負は決していた。

結局、あまりの興奮に力んだ甲は手もとを誤り、愛用の木刀は無情にも空を切る。
抗戦した乙のサバイバルナイフはというと、なんと甲の左わき腹を見事にとらえ、
甲は全治2カ月の重傷を負うはめに…。

まー、甲の内心の推移なども、まずあり得ない話ですね。
ではありますが、今回は上記のケースを用いてあることについて検討してみたいとおもいます!

それはなにかというと…

皆さんにもテレビドラマなどでなじみのある(?!)、
「正当防衛」
についてです!

まあ分野で言うと、ご存知の方も多いと思いますが、法律の「六法」のうち、人の犯した犯罪を取り扱う「刑法」にあたります!
端的にいえば「刑法」は、「犯罪をおかした人間に対して裁判所が判決を下し、具体的にその罪責に見合った科刑を負わせるための基準を規定するルールの集まり」のようなものです!

じゃあ、いささか唐突ですが、ここで「犯罪」って、皆さんは何を意味してると思いますか? また、何をもって「犯罪」が成立してしまうんでしょうか?

一般的に、「犯罪」ときくと、「悪いこと」、「法に触れること」というイメージや、「客観的に」みてどう見ても「犯罪とよべる」行為だから「犯罪」なんだ、ととらえられがちだと思います!

でも実際のところ、「刑法」でいうところの「犯罪」は、社会一般にいわれる「犯罪」とは、およそ毛並みが違ってきます!
つまり、一見して「客観的に」「犯罪とよべる」行為だからといって、必ずしも刑法上の「犯罪」として認定されるとは限らないんちゃう?!、という問題提起がなされるわけです!

このことは正当防衛にも同様に妥当します!

実際に、刑事モノのテレビドラマで、今にも殺されそうな女性がそばにあった鈍器で男性の頭部を殴打し、結果死なせてしまうという場面を見た経験があるかと思います。
これって、正直、「客観的に」にみて人を殺してるんだから「犯罪」に問われるんじゃね?! と、一概に言ってしまえるかもしれません。
でも、この場合、女性のほうだって、上のケースでいえば乙だって、自身の生命や身体の安全を守る権利を持ってるはずです。

そうすると再度、女性や乙が「客観的に」社会通念上「犯罪」といえる行為をしたからといって、それがすべての事案において「刑法」でいう「犯罪」にあたるとはいえないのでは?、という疑問が湧いてきます。

この点、実は刑法における「犯罪」認定の構造にカラクリがあります!下の図を見てください!(図はパソコンで書きました…。ごひどい図でごめんなさい。)



このように、「構成要件」、「違法性阻却事由」、「責任要素」と、刑法上の「犯罪」の認定過程には3つのステージがあります!
刑法の世界では、この3つのステージを経ることで初めて「犯罪」が成立すると考えます。ほんとは各ステージの中でもさらに複数の要素が存在するのですが、今日のところはごく簡単にお伝えしたいと思います!

まず、「構成要件」の段階で問われるのは、
「実際に行為を行った人の行為が、刑法典に定められている犯罪類型(簡単な例でいうと、199条の殺人罪や235条の窃盗罪など)に当たる結果を生じさせているのか、かつその行為が犯罪に当たることまでは認識せずとも、その行為を自分自身が行っているという自覚があること」
なんですが、たとえば上のケースで、乙はとっさながらもちゃんと「自覚」してサバイバルナイフを取り出し、甲に抗戦していますから、この構成要件のステージはクリアしたことになります。
人にナイフで切りかかること自体、すでに刑法典「傷害罪(204条)」にあたるので、これについて乙は具体的な条文までは分からなくとも、ナイフで切りかかっている「自覚」があるということですね!

次に、「違法性阻却事由」のステージに移っていきますが、ここでは、ある条件が満たされれば、先の「構成要件」段階で「犯罪とよべる」行為が成立していても、「違法性」が「阻却」、つまり「取り払われ」、その行為について違法性がなくなり、罪には問われなくなります。
要は「無罪」ということです!

これがすなわち、今回のテーマである「正当防衛」の仕組みです!
先ほど述べた、一般にいう「犯罪」であっても必ずしも「刑法」の意味する「犯罪」にはならない、つまり「無罪」になることもある、とはこのことを意図していっていました!

こうして正当防衛が成立する場合、「違法性阻却事由」が「存在しない」ということ、言い換えれば「あなたのした行為は違法じゃありませんよ」ということになり、「無罪」が確定するので、次の「責任要素」の段階に進む必要はなくなります。

ちなみに、もし正当防衛が成立しなかったら、この[責任要素」の段階に移り、「その行為者に責任能力はあったのか」が問題になります。
責任能力の存否」はニュースでもよく耳にするんじゃないかと思います!
ここでその行為者の「責任能力」が「ない」と裁判所が判断すれば、その人を罪には問えないことになってしまいます!
分かりやすい例では、その行為者が「重度の精神病」を患ってると認定された場合、犯罪は「成立しない」などですかね。
実際何をしているか自覚がない人に罪を負わせるわけにもいかないし、被害者にも、その損害に代えることのできる補償をしてあげることもむずかしいですから、
正直、「法律判断には完全解がない」という言葉の意味を思い知らされる事案ではあります…。
逆に「その行為が悪いことだと分かるくらいの責任能力」を有していれば、これら3つのステージをすべて満たし、晴れて(!?)「犯罪成立」となるわけです!

また、「正当」防衛というくらいですから、上でいう乙の反撃行為も文字通り「正当でなければならない」のが筋です!
その原則は、攻撃してくる者に対する対抗方法が「その相手の攻撃と同等程度の強度」でなくてはならないという条文解釈に表れています!
換言すれば、甲による侵害行為の強さと、乙による防御行為の強さがおよそ同程度と認められる必要がある、ということです。

これに上のケースをあてはめます。
甲の木刀に対して乙はサバイバルナイフなので、乙の方が危ないもの持ってるじゃん、と思うかもしれませんが
甲の木刀のもつリーチの長さや重量、その殺傷能力と、乙のサバイバルナイフの、鋭利ながらも短いという難点、その短さ、剣術を日課としているため剣に長けているであろう甲に切り込んでいくことの危険性とを比較衡量すれば、甲と乙の攻撃・反撃行為に差がない、同等であると解釈しても、あながち間違いではないということが分かると思います!
なので、このケースでは乙は正当な防衛行為をしたと認められ、犯罪には問われません(反対に乙の防衛行為が銃とかになってくると、乙は甲の木刀が及ばない範囲から狙い撃ちが可能であり、さすがに同等性が失われ、乙の行為は「過剰防衛」という犯罪となってしまいます)。乙は、形としては甲を刺していますが、
「ぼく犯罪者じゃないです」
といえるわけです!
そもそも奇襲をけしかけた甲に落ち度があるということでもあります。自業自得といってしまえばそれでおわりですが笑


さっきの攻撃・防御方法の比較は僕自身による事案の解釈でありますが、こういう自身の解釈をいかに条文を根拠として導き出し、裁判官を説得できる論理的な説明をするかが法曹の実務では問われてくるみたいです
自分の解釈が乙の幸不幸を左右してきます。ちょっと恐ろしいといえば恐ろしいです.
法令の検索なら誰もできますが、その法令に具体的事案に当てはめ、両者の譲るに譲れない利益、権利を天秤にかけ、たとえそれが苦し紛れの暫定的な決定であったとしても、判断を下し続けなければなりません。
法律は、時代を経て各時代・時期の社会的実相や知能の高さなども反映しながら、徐々により良い方向に洗練されてきています!そのなかでも「刑法」は人の命も取り扱う分、各時代の人々の中心的関心事でもあり、人間の恣意的な善悪に対する発想の根幹にも密接にかかわってきました。
やはりここでも、人間がよりよい生活のために、また人間の本来持つ価値、生命の尊さに重きを置くがゆえに法律研究者の抱える、いわば「悩み」の表明、やむを得ない暫定的な最善策ともいえる文言が、条文や判例には散在しています
僕自身将来法律に携わっていこうと考えてるので、こういうことを考え得るとなかなかやりきれない思いに今からなったりしてしまいますが、
さまざまな思索は心の内に秘めながら、今は粛々と社会に通用しうる専門性を高めていきたいと思います!

以上若干分かりづらいのを長々と語りましたが
今日みた正当防衛の条文を見るだけでも都合上まだ触れられてない、やむをえずカットした論点が複数存在します!
(今回は未遂犯の検討は一切触れずに議論しました。)
なるべく分かりやすく、を優先したので、ご容赦を!

前回と併せまして、僕の担当回では
「歴史関係」「法律」を2大テーマでやっていきたいとおもいます!

次回は「もっと簡潔に」
を目標にがんばります!

えるでした!